『個人消費の増大のために労働分配率を高めよ』

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

6月9日に閣議決定されたいわゆる「骨太方針2017」の中で2020年度中の財政健全化方針に関する記述が変わった。

つまり、「基礎的財政収支を20年度までに黒字化し」に、「同時に債務残高対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げを目指す」という文言が加わったのだ。このことの意義につき国債の更なる増発によるGDPの押し上げを目指すものだという批判が沸き起こっている。

しかし、GDPの増大を目指すのであれば、何も赤字国債や子育て国債の発行を捻り出して、僅かばかりのGDPの上昇を企むことに汲汲とするのは誤りであると思う。それよりはGDPの60%を占める「個人消費」の増大をこそ促すべきである。

個人消費が低迷してきたのは、デフレマインドが沁み込んだからというより(それは結果だ)給与所得が漸減してきたからに他ならない。1990年代の初頭にバブル崩壊して以降、銀行の貸しはがしを迫られた企業群は、借入金の返済に奔走し、設備投資どころか、賃下げを従業員に懇願した。

時あたかも、ITバブルが崩壊しグローバル化の進展の波にも巻き込まれ、2002年の「連合」のスローガンさえ、「すべての職場で雇用の維持・安全に全力をあげる」と賃上げを放擲し、「雇用」を最優先にしたのだ。その要請は本来一時的なものであった筈だ。しかし、経営者側は借金返済を終えても、人件費の引き上げに動くことはなく、また、さらに非正規雇用やパートを多用することにより、労働分配率を引き下げていった。そして生み出した過剰利益を内部留保に回しため込むという行動を取り始めた。今や法人の内部留保はこの3月末で390兆円の多きに達している。

昨年、野口悠紀夫氏のセミナーに出た際、景気刺激のために「300兆円もある内部留保から人件費に回せばよいのでは?」と質問した。彼は、内部留保の源泉たる当期利益は売り上げから製造原価(その中に工場の人件費も含まれる)を引き、さらに他の人件費たる販管費を引き自動的に計算される。しかも人件費は他との競争力から一義的に決定されると順序を重視して答えた。そんな順序はわかっている、しかし人件費は交渉事で決まる事項ではないか。低く抑えたおかげで大量の超過利潤を積み上げられたのだ。

労働需給が逼迫している今こそ「連合」は高らかに叫ぶべきだ「ベースアップを!」と。

2017.7.18 記