『無担保・無保証』  

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

4月のレポートで、売り上げ9億円、従業員17名、借入残高7億5千万円の中小企業を、今年1月はじめから経理を見ることになり、日々金融機関が多すぎると感じているということを書いた。
 このような中小企業にしては多すぎる借入には、当然社長個人が所有する不動産に抵当権が張り巡らされ(約3億円分)、全てに社長の個人保証がついている。中小企業の経営者というのは、まさに全存在をその企業に託しているといってよい。

借入先の7金融機関の人たちや、新規の飛び込みの金融機関の人たちと日々応対する中で、平成25年12月に出された「経営者保証に関するガイドライン」を知った。
 これには個人保証をできるだけ取ることなく、企業の業務の内容や成長性をよく踏まえて融資するよう勧めている。
  また昨年7月に就任した森信親金融庁長官が各所で「地方創生には地方企業の価値向上が必要であり、その為に地方金融機関の果たす役割が重要である」と強調していた。そして、融資の基準として「金融機関の健全性」から「企業の成長」に大きく舵を切るように宣言していた。
 それらを踏まえて、3月はじめに私は、社長に「1年以内に無担保・無保証でお金を借りてあげますよ」と約束した。社長は、そんなことは夢物語だというように笑いながら「そうなるといいですね」と答えた。

5月に入って、信用金庫では実質第1位の城南信用金庫の融資担当の人が飛び込んできた。何度かやり取りをする中で、社長の個人保証なしで借りられるかもしれないという発言があった。私は喜んで資料を整え審査を依頼した。しかしその結果は駄目であった。
 やはり我々の会社レベルではまだ無理かと少し落ち込んだ。

6月になり、借入先の一つであるりそなの担当者がきてこんな話をしていった。
 彼が担当している売り上げ20億規模の会社(借入総額8億円、メイン銀行が三菱でシェア5割、りそなは2億円)が担当者を全員集め、借入を全額返済し城南信用金庫に肩代わりしてもらう旨宣言した。城南信用金庫の条件は無担保・無保証であると。それからは、会う人ごとにこのエピソードを披露し相手の反応をみることにした。その会社がそもそも無保証で借り入れられた特殊な例であるという反応や、城南信用金庫は何百億円かの無保証枠を設けて大キャンペーンを張っているのだろうという反応であった。

そのころ、昨年八千代銀行と経営統合し新橋に中小企業の新規開拓専門の空中店舗を構えた東京都民銀行の人が飛び込んできた。当社のことをよく調べており、最初からビジネス・マッチングの具体的な提案をしてきた。その件は結ばれることはなかったが、何度か会ううちに本社の決定事項ではあるが無保証融資の可能性があると言ってきた。

結論だけを書くが、7月29日東京都民銀行と新規で3,000万円、利率1.475%、5年固定、無保証で借り入れる契約を結んだ。
 私は「無担保・無保証」による借入は一時的な現象ではなく、トレンドになると読んでいる。

2016.8.16 記