伊藤さんと鈴木さんとの間に割って入った伊藤さん

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

間違いなく流通業のトップを走る「7i グループ」で、お家騒動が続いている。

遂には、天皇ともいうべき、かの鈴木敏文さんが辞任することになった。「その真相は?」的報道が様々なメデイアで報じられている。

以下は長年創業者である伊藤雅俊を尊敬し、かつ鈴木敏文さんの天才的発想を驚きの目で見続けてきた一人の人間が、ある視点からみた感想である。

創業者である伊藤雅俊さんは、人格者として知られ「ヨーカ堂が今日あるのは『お客様と社員』のおかげです」と常日頃公言していた。10 年程前には持ち株の一部約60 億円程を永年勤続者に贈与し、従業員への感謝の念を具体化している。また伊藤雅俊さんが凄いのは、経営の前面から身を引いて後、鈴木敏文さんに完全に権限を移譲し、その天才的能力を遺憾なく発揮させたことだ。

推測するに鈴木さんは、会社はだれのものかと問われたとき、まずお客様のものだと答えるであろう。そして、その次は経営者として就任中は私(鈴木)のものだと答えたに違いない。グループの利益の80%を稼ぎ出すコンビニエンスストアという業態を創始し、実にさまざまな付加価値をつけて今日の日本における、必需な存在にまで高めたのは鈴木敏文という天才なしにはあり得なかった。

しかし、ここ数年は鈴木さんの専横的行動が何かと聞かれるようになっていた。活かす通信の3 月号にも書いたように、昨年末にはブラック企業大賞を取り、今年の1 月にはイトーヨーカ堂の社長が辞任するといった極めて不名誉な事実が続いた。

ここで登場するのが「ミスターROE」と言われる伊藤邦雄さんである。彼は現代アメリカにおけるコーポーレートガバナンス(企業統治)の代弁者であり、彼の価値観は株主第一主義、また主張は社外取締役による経営者の監視である。今回の事態のそもそもの発端となった、指名報酬委員会ができたのが今年の3月であったのだという。鈴木さんとその子飼いの村田さんのほかに元警視総監の米村敏朗さん、そして委員長を務める伊藤邦雄さんの4 名が構成メンバーとなった。このとき爆弾は仕掛けられた。

この指名報酬委員会を設立し、伊藤邦雄さんという刺客を送り込んだのは誰なのか?

おそらく、鈴木さんの専横的行動を抑止するくらいのつもりであったのだろうと思われる。しかし事態は大きなものになってひとまず終息しようとしている。今後の7i グループは「会社は誰のものか?」と聞かれたとき、何と答える方向にいくのだろうか?

2016.5.17.記