『ICT技術におけるフロンティアの消滅』

千葉の県人 鎌田 留吉

米国ナスダック市場が2000年のITバブルの際につけた史上最高値を指呼の間にした。当時は明らかにバブルであった。2000年3月10日につけた高値5,048.62は私の目の黒いうちには、具現化されることはないだろうと考えていた。いわゆるIT技術がつぼみをつけたのは1985年頃と考えられ、それは正に「革命」と呼ぶに相応しい変化を社会にもたらした。その理想買いが15年かかって頂点に達したのが2000年のナスダックの天井値であったといえる。それから丁度15年ナスダックは終値で5000ポイントをクリアした。

前回と比較して今回のナスダックの株価形成はまともであり、史上最高値を超えてまだまだ伸張するだろうという意見は多い。しかし、キャピタル・パートナーズによるナスダックの3月15日現在のPERをみると21.06倍である。私はこれは高すぎると考えているのだ。

ICT技術は大きく1-PC、 2-インターネット、3-携帯電話と整理できるであろう、それぞれヒーローの企業があらわれ1ではアップルとマイクロソフト、2ではヤフー・グーグル・アマゾン、3ではノキアそしてアップルと変化してきた。そしてこれら技術をハイブリッド化した革新はアップルのスマートフォンでその頂点に達したように思える。

何故ならこれら最先端の企業群が最早ICT分野においてみるべきものを生み出しあぐねていると思えるからである。PCで独り勝ちを誇っていたマイクロソフトが2001年にゲーム機Xboxを発表したとき、天下のマイクロソフトが現在考えられることがゲーム機なんだと失望したことを憶えている。そのマイクロソフトが、もう終わったノキアを買収したのが2013年であった。グーグルはその利益と高株価を梃子に闇雲にさまざまな企業を買収している。もしかしたら、企業の売り上げや利益は増加するのかも知れないが技術的創造性を感じさせない。今やダントツの時価総額を誇るアップルは、「タイタン」と称する電気自動車の開発プロジェクトに血道をあげている。今更、電気自動車に乗り出して本職のメーカーと太刀打ちできると考えていること、それはICT技術の分野におけるフロンティアを喪失してしまっていることの表白に私には思える。

そのことは、彼らの資本政策を見れば明らかである。成長を諦めたマイクロソフトはかなり以前から自社株買いと、増配で内部留保を社外流出させている。天才ジョブズ亡き後CEOとなったクック氏はクック船長ほどは冒険家ではなさそうだ。事実当初の発言とは異なり、2月10日に「全般的にみてキャッシュに対する私の認識は、当社には不要というものである。ある程度のバッファーを備えた上で株主に還元したい。」と、ICT技術におけるフロンティアをを喪失したことを宣言した。事実2013年から大量の自社株買いを継続しており、過去の蓄積を外部に放出することをエンジンとして株価は上昇を続けてきた。

彼らの行動から、最早完全にICT分野における技術革新による成長のフロンティアは消滅してしまっていることが伺い知れる。それら企業群の集合と思われているナスダックのPERが21倍といううのは高すぎはしないか?

2015.3.17 記