12月15日   新・相場展望
特定非営利活動法人イカス理事
株式評論家  鈴木 英夫
       「厳しいといわれる新春相場での対応」

 サブプライムローン問題を中心に不透明感が多く漂い、先行き見通しを予測するのは極めて難しいが、時節柄恒例の「新春相場見通し」を述べ、投資対応策を試みる。サブプライムローン問題は一向に収まらず、スイスの金融大手UBSは、これに伴う損失を新たに100億ドル(約1兆1,100億円)の評価損を計上すると発表した(12/10)。
 特に今回は「スーパシニア」と呼ばれる高格付商品にも格付け引き下げで損失が膨らむなどさらなる懸念を呈して来ている。そして、サブプライムローンに絡む金融機関の損失1,000億ドル(約11兆円)に達している  模様であるが、OECDは最大3,000億ドル(約33兆円)に達すると試算しているし、一部には1兆ドル(約111兆円)を越すのではないかと推測されている。 このため、OECDは2008年の経済成長を米国2%(従来は2,5%)、欧州1,9%(同2,3%)、日本1,6%(同2,1%)と下方修正し、主要国の実態経済の悪化が顕在化するとしている。内閣府は7日に発表した7-9月期のGDP(改定値)は1,5%成長と下方修正し、2007年度の政府見通しの実質2,1%の成長達成は無理で、1%台に低下することは必至とみている。このような動きを踏まえてか、野村證券金融証券研究所は10日に主要347社(除く金融)の2007年度の経常利益は10,6%の見通しと発表したが、これは9月時点の予想から1,4ポイント下方修正している。このように、サブプライムローン問題がさらに悪化する懸念もあり、これが実態経済にも影響をもたらし、企業収益の伸びを鈍化させるので、来る年は株式投資にとって厳しい年になるというのが、多くの識者のご託宣である。「ミスター円」の榊原先生も先般(12/9)のTV放送で同様な見方をされ、いま一時的に持ち直している株価は、さらなる下落があってもおかしくないとの趣旨の発言をされていた。

 さて、筆者もかかる識者の方々の見方を否定するものではないが、株式市場の特性をも鑑み、来る年は株式投資にとって醍醐味のある年になるのではないかとも思っている。債券は金利が上がれば価格は下がり、逆に低下すれば上昇する。それは、程度の差こそあり、全銘柄が同一方向に動く。ところが、株式は全体相場がどんなに悪くとも、史上最高値を取るという快挙をあげる銘柄が必ず示現する。‘97〜‘98年に金融システム不安が顕在化し、拓銀(‘97年11月)、山一證券(‘97年11月)、長銀(‘98年9月)、日債銀(’98年10月)といった大手金融機関が相次いで経営破綻し、全体相場は長期に亘り低迷、下落し、金融セクターの株は軒並み暴落した。しかし、この最中に同セクターのオリックス、日立クレジット(現日立キャピタル)は逆行高し、史上最高値を更新した。金融ビックバンの下でこれらノンバンクはCPの発行、リース、クレジットなどの会社債権の証券化が解禁されたことを巧みに杷え、低コストの自己資金調達を積極的に進め業容の変ぼうを遂げたことをマーケットが素直に評価したわけである。

 市場最高値を更新する銘柄には共通項がある。世の中の流れを的確に杷え、それに向かってリスクを取り、積極対応するということである。来る年にも世の中の流れを変えるようなテーマがある。例えば、地球の「温暖化ストップ」、それに挑むSRI(社会的責任投資)などの現況の問題はまさにその典型であろう。また、デカッブリングの流れの下で「BRICS」など新興国市場の一段の拡大に絡むプロジェクトの展開、豊富なオイルマネーなどを背景に国際金融市場の新たな担い手として頭角を現わしてきた「政府系ファンド」の動きなどである。これらの世の中の流れに変化をもたらす動きに前向きに対応し、リスクを取り業容を変ぼうさせる企業が必ず出る筈である。それらの企業の株価は全体相場がどんなに悪くとも、高値をとる動きをする筈である。全体相場が良くないという声が多いだけに、それらの銘柄を発掘することは、まさに株式投資の醍醐味である。         (以上)