裁定取引(アービトラージ)
 裁定とは「事柄の善し悪しを調べ、決定すること」ですが、株価指数先物取引では有利な時点での
売買で利益をあげることを意味します。有利な時点とは、割安なものがあるときです。割安、割高は
現物価格と先物価格の価格差に現われます。当然、安いほうを買い、高いほうを売ることにより差益
を得ます。
 では割高、割安はどのように判断するのでしょうか。その前にまず、現物とは何か。日経225先
物なら採用銘柄の225銘柄すべてのことですし、TOPIX先物なら東証一部全銘柄のことです。
各々すべての銘柄を売買すれば現物を売買したことになりますが、実際には平均株価や株価指数と連
動性の高い銘柄を組み合わせて売買するのが一般的です。この現物価格と先物価格の間には理論的な
関係があります。先物取引の決済は将来行われるため、決済するまでの期間、資金を他の金融商品で
運用すれば、その間の利息を受け取ることができる理屈です。 
 このため、先物価格は理論的に現物価格(現在の平均株価や株価指数)よりその時点の短期金利分
だけ高くなります。ただし、厳密には、先物取引では現物株式保有時に得られる配当金は受け取れな
いので、この分は差し引かなければなりません。例えば、日経平均株価が20,000円、短期金利
が2%、配当利回りが0.5%、決済まで90日なら、先物の理論価格は次のようになります。 
現物価格×{1+(短期金利−配当利回り)×(決済までの期日/365日)} 20,000円×{1+(0.02−0.005)×(90/365)} =20074円 しかし、実際の先物価格は需給関係で変化します。上記理論価格より高くなったり安くなったりしま す。先物価格が理論価格より高くなったとき(20100円など)が割高、安くなったとき(200 40円など)が割安です。ここに裁定の働く余地が生まれます。先物が割高なら現物を買い先物を売 りますし、先物が割安なら先物を買って現物を売るわけです。
これが裁定取引です。先物取引最終日には、決済までの日数が0になります。先物価格は現物価格に 一致します。この場合の最終決済値段をSQ(スペシャルクォーテーション、対象となる平均株価ま たは株価指数に採用された銘柄の取引最終日翌日の値段)といい、それまでに決済されなかった分は、 このSQとの差額を計算し自動的に決済されます。
なお、実際の取引では手数料も含めて割安か割高かを判断します。
裁定取引
さいていざん
裁定取引との絡みで売買されている現物株で、まだ決済が終わっていない残高。裁定取引では、 株価指数先物と現物株はセットで取引され、一方が買いであればもう片方の取引は必ず売りになりま す。つまり、(1)先物売り・現物買い、(2)先物買い・現物売り――の2つです。 (1)に伴う現物株の残高を「裁定買い残」、(2)に伴う現物株の残高を「裁定売り残」と言います。裁 定残の量は、相場に少なからず影響を与えます。例えば、先物取引には決済日がありますが、その決 済日の時点で裁定買い残大量に残っていると、相場を大きく崩す要因になります。
仮に、次の決済日に乗り換えができないと、現物を売って先物を買い戻す裁定解消が行われ、大量の 株式が一斉に売られてしまうからです。
 よく新聞に「裁定買い残高増加」とか「裁定解消売りがでた」と書いているけど、いったいどうい
う意味?裁定取引とは、現物株と先物の価格差を利用して、リスクなしに利益を得る取引をいいます。
たとえば、日経平均が1万円の時に、先物が1万100円だったとすれば、割高な先物を売り、割安な
現物株(日経225の銘柄を全部)を同じ金額買い、さらに先物の満期に先物を清算し、現物を売るこ
とでこの差100円の利益を確実に得られる取引のことです。日経平均先物には満期があり、最終的な評
価額は3月、6月、9月、12月の第二金曜日の225銘柄現物株の寄り付きの値段で決まります。
これをSQ(特別清算指数)と呼んでいますが、先物を満期まで持って、225銘柄の現物株を寄り付 きで売れば最終的に先物と現物株の価格は同じ(SQと一致)ものになりますから、最初にあった差 額分だけ利益になるというわけです。理解しにくいかもしれませんので、図で説明しましょう。
この図からお分かりのように、将来日経平均が上がろうが下がろうが、裁定取引を利用すれば、最初 にあった先物と現物との差(スプレッド)がそのまま利益として確定するということです。
「裁定買い」とは、現物の225銘柄を買い先物を売るという取引で、「SQでの清算」とは清算期日に 買っていた現物をすべて売り、先物は清算指数で決済するという取引です。裁定買いを解消するため には、SQによる清算のほかにも「裁定解消売り」という方法もあります。これは、清算期日前に、 現物と先物の価格差がなくなった場合に、買っていた現物を売り、売っていた先物を 買い戻せば、清算期日を待たずに最初の差(スプレッド)分の利益を確定することが出来るからです。
裁定取引での利益はわずかなので、資金を大量に持っている場合でないと意味がなく、個人が行う取 引ではありません。ただ、株式市場はこの裁定取引の影響を大きく受けるので、個人投資家も裁定取 引の動向には注意を払う必要があるわけです。一般に、株式市場が上昇しているときは、先物が買わ れますから先物の価格が上がり現物との価格差(ベーシス)が拡大してくるので、裁定買いが入りや すくなり、裁定買い残は増加します。逆に株式市場が下落してくると先物は売られて価格が下がり、 現物との価格差がなくなり、裁定解消売りが出やすくなります。
株式市場が下落しているときに裁定解消売りが出るということは、市場で現物の株が大量に売られる わけですから、株価の下げを加速させます。株式市場が上がっているときに裁定買いが入るというこ とは、市場で現物の株が大量にの買われるわけですから、株価の上げを加速させます。東証の1日の 売買代金は1兆円前後ですが、裁定残高はその3倍はあるといわれています。ですから、大規模な裁 定買いや裁定解消売りがでることは、市場に大きな影響を与えることになるのです。