2020年6月25日(No.10)

「GAFAMとインド」

GAFAMガーファム とは、アメリカのテクノロジー企業5社、G(Google)A(Apple)F(Facebook)A(Amazon)M(Microsoft)の頭文字を取った呼び方です。これらの大手5社の株式時価総額の合計(約560兆円)は、日本の東証1部約2,170社の合計を上回り、最近大きなニュースになりました。
しかも、新型コロナとの共存を前提としたテレワークやネット通販などがより日常となるニュー・ノーマルの時代にはいると、これらの企業は更に大きな勝ち組になると予想されています。

今回は、このGAFAMとインドとの関係についてお話します。

GAF(グーグル、アップル、フェイスブック)の創業者である、ラリー・ペイジ、スティーブ・ジョブズ、そしてマーク・ザッカーバーグは、3人ともインド北部のウッタラカンド州にある寺院(Kainchi Dham Ashram)を訪れています。
中でもスティーブ・ジョブズが1974年、未来のビジョンを考えていた19歳の時にその寺院で、東洋の霊性、直感的なものの重要性を悟り、その経験が2年後のアップルの創業のきっかけとなったという話は有名です。

また、ジョブズをメンター(指導や助言をしてくれる人)としていたマーク・ザッカーバーグも2008年フェイスブックを起業したばかりの不安定な24歳の時に「自分の信じるミッションに再び繋がりたければインドの寺に行け」というジョブズのアドバイスにより同寺院を訪れました。
そこで彼はインドの人々の繋がり方の観察から、ネットワーク事業の重要性を再認識し同社は苦境から立ち直ることが出来たとインドのモディ首相との対談で語っています。その寺院はその後間もなくザッカーバーグ寺院と呼ばれるようになります。

(左から)ラリー・ペイジ スティーブ・ジョブズ マーク・ザッカーバーグ

更にグーグルとマイクロソフトのインドとの関連について言えば、両社のCEOのサンダー・ピチャイとサティア・ナデラは共にインド出身です。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツは、インドがこれから数年の内に世界で最もデジタル化した国になると予想しています。さらに彼は昨年の11月のインド訪問の際に「短期的なことは分からないが、向こう10年で見ればインド経済はかなり早いスピードで成長し、政府は貧困の撲滅とヘルスケア、教育の拡充に大胆に投資をすることが可能になるであろう」と述べています。

アマゾンのジェフ・ベゾスも、同社のこれからの成長戦略の中で最も重要なのはインドの電子商取引とテクノロジーへの投資だと株主総会での質問に答えています。彼は今年の1月にニューデリーで開かれたビジネスサミットでも「21世紀はインドの世紀になると予想する」(“I predict that the 21st century is going to be the Indian century”)と大変インドを有望視する発言をしています。そして、実際にインド南部ハイデラバードに開設した世界最大の同社のコーポレートキャンパスを含めてインドに巨額を投資しています。

このようにインドは、その精神世界のエネルギー、経営者の能力、経済発展の可能性を背景に、GAFAM企業の創業から、苦境の克服とグローバル化、そしてこれからのAIを中心とした成長戦略にも大きく関係していることが分かります。

最後にアップルのスティーブ・ジョブズに話を戻します。

左の画像はジョブズが2011年に56歳で亡くなる数日前、病室で妹に自分の葬儀に来てくれた方々に渡してくれと頼んだとされる書籍です。同書はジョブズが唯一iPadに入れて生涯読み続けた愛読書で、日本では「あるヨギの自叙伝」という書名で1983年に出版されています。内容は、パラマハンサ・ヨガナンダというインドのヨガの聖者の波乱に富んだ生涯を綴っています。
常識では考えられないようなインドの聖者達の奇跡や超常現象などが数多く紹介されているので、少し引いてしまいますが、ジョブズは人間が根本的に持つ直感(Intuition)の重要性を伝えたかったのではないかとこの本を私に譲ってくれたインドの友人は言っていました。

東洋の精神的な世界を扱ったこの本は、茶色の木の箱に入れられて、スタンフォード大学で行われたジョブズの追悼式への参加者約800名に配られたそうです。実用性中心の西洋のそれも理屈が幅を利かせるTechの世界のど真ん中に生きるシリコバレーの人たちが、この本の内容をどのように捉えたのか大変興味深いですね。